第28回


スキップ・メスキート

今晩はスキップ・メスキートがバンドにいた最後の頃の、昔のタワーの話を書こうと思う。
70年代始め、テネシー州、メンフィスだった。

僕ら、クリーデンス・クリア・ウォーター・リヴァイヴァルの前座でツアーをしており、夜はオフだった。
ピーボディに滞在しており、そのホテルでは日中ロビーでアヒルをよたよたと歩かせていた。
からかってるんじゃないよ。

とにかく。
その日も夜早くからオフになったんだ…。

ま、若かったからなぁ。
数人は午後早くからテキーラを飲み出してて、僕は少々飲み過ぎていた。わかるかい?
使っていたレンタカーのうちの1台はステーション.ワゴンだった。
当時3列目シートは後ろ向きだった。覚えているかい?

街にはかの有名なR&Bグループのザ・バーケイズが来ていて、彼らを見に行こうと言う事になった。(※)
ステーション・ワゴンに乗り込み、ミックと僕は最後尾で後ろ向きに座った。

すぐにわかった…僕はホテルの部屋にいるべきだったと…そう思うだろう?

スキップがしらふで運転してたのは確かだ。
が、僕らはどこへ行ったらいいのかわからなかった。
住所も、手がかりもなく、もちろんグーグルもない。
とにかく、そこら辺の住宅街を5・6回も行ったり来たりしたに違いない。

僕は青ざめ始めていた。
ミックが見て大声で前に向かって叫んだ
「おい! ヤツぁヤバいぞ!」

ううっっ。

少なくとも、即座に窓を開けた。
僕の輝ける瞬間ではなかったと言えるだろう。

ミックがズボンのベルトを持ってくれて、僕は後ろに身を乗り出していた。
それはもう永遠かと思われた。

さて、僕らが完全に迷子になってるってのを覚えているだろう。
多分ここらはさっきも通った所だ。

突然スキップが
「なぁ。この家の前を通るのはもう6回目位なんだけど、グレッグをここんちの前に置いてくってのはどうだろう?
 で、ザ・バーケイズを見に行って、帰りに拾ってけばいいだろ?」

僕がどう思ったと思う??

スキップはこの近所にどう戻ってくればいいか覚えようとしているようだった。

誰が大笑いした覚えているぞ。
僕は笑っちゃいなかった。
スキップはマジだった。

ともかく、そのプランは却下された。良かったよ。。
その晩、ザ・バーケイズが演奏してるクラブは見つからなかった。

ピーボディに戻る道がちゃんとわかったのはラッキーだった。
そのメンフィスの夜以来、テキーラを飲み過ぎる事はなかった。何年も。

脚注として。
スキップはタワー・オブ・パワーを造り上げたオリジナルメンバーだ。

なんと素晴らしい男であり、優れたミュージシャンだろう。
僕らは2曲、Gone and Mahdi と The Expected Oneを共に作った。

最後に会ったのはフィルモアでの40周年記念ライブだっった。

スキップ、安らかに眠ってくれ。

では、また来週。

(※)ザ・バーケイズ http://music.goo.ne.jp/artist/ARTLISD12040/

<フィルモアでの結成40周年記念ライブでの集合写真>


後列左から順番に……
ロン・べック(Dr)、ラス・マキノン(Dr)、 ミック・メスティック(Dr)、ニック・マイロ(Kb)、
トム・ポリッツァー(Sax)、 ロジャー・スミス(Kb)、故スキップ・メスキート(Sax)、
チェスター・ トンプソン(Kb)、ミック・ジレット(Tp)、ノーバート・スタッチェル(Sax)、
マーク・ハーパー(G)

前列、少々ジグザグになりながらも左から……
アドルフォ・アコスタ(Tp)、 ハーマン・マシューズ(Dr)、ボビー・スピアーズ(Kb)、
デヴィッド・ ガリバルディ(Dr)、ビル・チャーチビル(Tp)、グレッグ・アダムス(Tp)、
ラリー・ブラッグス(Vo)、カーメン・グリロ(G)、エミリオ・カスティーヨ(Sax)、
スティーヴン・マッケンジー・クプカ(B.Sax)、エリス・ホール(Vo&Kb)、
マイク・ボガート(Tp)、そしてリチャード・エリオット(Sax)